ARTIST / アーティスト

ART PROGRAM /アートプログラム部門

青木芳昭×丹羽優太 Yoshiaki Aoki×Yuta Niwa

青木芳昭×丹羽優太
青木芳昭×丹羽優太

神々にみちびかれ

辺戸岬の対岸に大石林山はあり、琉球神話に語られている巨岩・亜熱帯の自然からなる山々は古来より聖なる地とされてきた。足を踏み⼊れると、まさに私がテーマとしてきた須弥山そのものであり、極楽浄土の姿を目の当たりにした。
45年間西洋画を描いてきた私は、60歳で西洋画と決別し同時に45年前からテンペラ画に古墨を応用する制作を続け、墨のポテンシャルの高さを感じていた。
墨は生紙を支持体とすることで墨色、滲み、カスレといった予測不能の世界観を表出する。
18世紀の伊藤若冲の水墨画により私は西洋画の閉塞感から開放された。
磨墨液は⽣紙に垂直に浸透し同時に横へと広がり、フラットでありながら3次元を表出する。
この価値観を共有してきたのは東アジアの中国・台湾・朝鮮半島、そして日本である。
とりわけ日本の軟水圏では、東アジアの硬水圏と異にする墨表現が伊藤若冲の筋目描きに代表される。
若冲の前にも後にも当時から邪道、掟破りとされた筋目描きは存在しない。(昭和の戦後に不染鉄の波表現に筋⽬描きが見られる)
西洋画におけるデッサンが写真的であるのに対し、生紙を通した墨では外に広がる自然感がある。
私が目指す「極楽浄土」の世界は、天を突き抜ける宇宙への広がりが求められ、若冲や不染鉄が明墨や乾隆年製の紙を求めた必然を私淑し、生紙と古墨という素材をコンセプトにしなければ成立しない。

理科準備室入り口より右壁に「神宿」①(118×524cm)を見上げ、中心にある大理石のテーブル上に「生命の起源」に目を落とす。背後にある収納棚のガラス扉10面に、今展でも2022年の光明院「刻苦光明」展につづき、「やんばる」をテーマに「青木芳昭×丹羽優太」のコラボ制作をした。

※①神宿(かみやどる)
辺戸岬から大石林山を望む対岸に立つと、須弥山の世界を臨むことができる。巨岩・奇岩は俗⼈を寄せつけず、神のみが降り立つことが赦される。人々は祈り須弥山へと誘われる。ヤンバルの地が須弥山であっと初めて気がついた。

PROFILE / プロフィール

青木芳昭

青木芳昭 Yoshiaki Aoki

PROFILE

美術家(技法材料学)。1953年 茨城県那珂市に生まれる。1976年パリ留学、ル・サロン名誉賞受賞。 1977年 中央美術研究所主宰( 2013 年退職) 。1983-84年 パリ留学。1989年 安井賞展出品。 1991年 東京セントラル美術館油絵大賞展出品。1996年 銀座資生堂ギャラリー個展。 1997年 安井賞展出品、NHK ハート展出品。1999年 アカデミア・プラトニカ設立・代表。 2007年 京都芸術大学客員教授。2011年 京都芸術大学教授。 「よくわかる今の絵画材料」出版(生活の友社)。京都技法材料研究会会長(2023年解散)。 2015~18年 21世紀鷹峯フォーラムモデレーター。2015年 長谷川等伯筆2点の発見から修理に関わる。 寺田倉庫PIGMENT(ピグモン)顧問。2016年 日本文化藝術財団 第8回「創造する伝統賞」受賞。 2018年「奈良墨」伝統的工芸品指定プレゼンテーター。 2021年~季刊誌・美術屋「百兵衛」に「これだけは知っておきたい -画墨の基礎知識-」を連載中。 現在 京都芸術大学大学院教授、アカデミア・プラトニカ代表、(株)呉竹顧問

丹羽優太

丹羽優太 Yuta Niwa

PROFILE

画家。日本絵画の文脈、技法材料を用いながら、人々には見えない厄災、抵抗できない力が常に黒い何かに見立てられてきた歴史に着目し作品制作を行う。
2019年に京都芸術大学大学院ペインティング領域修了した後、北京へ留学。現在は東福寺塔頭光明院に住み込みで制作活動を行なっている。
近年の主な展覧会にArt Collaboration Kyoto「Golden Fight of Gods 黄金衆神之闘」、個展「キメラ流行記」、MIDTOWN AWARD2021、個展「なまずのこうみょう」、やんばるアートフェスティバル 山原知新、アートアワード丸の内2019などがある。

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